By Philip Poole
ニュージーランドにケレルというとてもきれいな色をしたハトがいます。ハト…というか、ニュージーランドの固有種でハトの一種というべきですかね。
ケレル(Kereru)とは、マオリ語の読みで、英語では、ニュージーランド・ウッド・ピジョン(New Zealand Wood Pigeon)と呼ばれます。
(公園や繁華街などでうろうろいるようなハトは、シティ・ピジョンやストリート・ピジョンなどとよばれ、はっきりと区別されています。)
美しいハト…の一種。ケレル
ケレルは、シティ・ピジョンと比べるとだいぶ大きく、体長50センチ、650グラムくらい。なんといっても羽毛の美しさはシティ・ピジョンとは全然違います。
ケレルは頭部から胸部、翼にかけては、紫がかった光沢のある緑色をしていて、胸の下~お腹あたりは真っ白です。そのコントラストがとてもきれいで一度見るとすぐに覚えてしまうと思います。
あとケレルが飛ぶ時に聞こえる、いかにも体が重そうな飛び方、羽音も印象的です。
(飛ぶときの音がどうしても、鈍重そうで『太ったハトが一生懸命飛んでいる』という風に見えてしまうので、個人的に親しみを込めてファット・ピジョンと呼んでいます。)
森を豊かにするケレルの役割
ケレルは、シティ・ピジョンのような雑食ではなく、果実の身を食べる、果食性の鳥です。
ケレルが果実を食べ、糞をすることで糞に混ざった種子が森に広がり、森の木々や植物が芽を出し、どんどん森が育っていくことから、ケレルがいる森は豊かな森であると言われています。
ケレルが有難がられる最大の理由は、ケレルが直径1センチを超える大きな果実を食すことが出来ることにあります。
種子を運ぶ役割は、一般的には森にすむリスやネズミのような哺乳類などが果たすのですが、かつて鳥たちの楽園といわれた、ニュージーランドには、鳥の外敵になる哺乳類がおらず、もっぱら森の種子を運ぶ役割は、鳥たちが果たしていました。
ケレルよりもっと大型の鳥が絶滅せずにいたころは、その大型の鳥たちが種子の運び役を務めていたため、植物の種子が大きくても問題なかったのですが、大型の鳥たちが絶滅した今では、その大きな種子を運べる鳥といえば、ケレルくらいになってしまい、ケレルは今では、森の種子の拡散を手助けできるとても貴重な役割を果たしており、森の生態系の維持には欠かせません。
ケレル殺しは罰金と刑務所行きです。
ケレルをはじめとしてニュージーランドでは、野鳥たちの保護活動に力を入れています。
The wildlife Actという法律も制定されていて、これによると保護対象となっているケレルを殺してしまった場合、2年間刑務所入りが課されるそうです。
または罰金$100,000です。$100,000というと日本円だと700万くらいにはなります。最悪、罰金と刑務所行き、両方の場合もあります。かなり本気度を感じます…。
時々、それを知らない海外からのハンターなどが保護動物を撃ち殺してしまって問題になったりもします。
2010年には、ノルウェーから来たハンターたちがケレルを撃ち殺してそれを動画サイトにアップし、さらには、ケレルを撃ち殺しただけでなく、違法にパラダイス・ダックをライフルで撃っていたこともわかり大きな問題になりました。
また、つい最近では、ウェストコーストのキャンピング・グラウンドで調理されたであろうケレルの残骸が発見されました。
2羽のケレルが撃ち殺されて、食用目的に胸の部分をくりぬかれ、それ以外の部分は捨てられていた状態で見つかったそう。
ケレルを撃ち殺すとはけしからん、とDOC(環境省)は、現在誰がこんなことをしたのか情報提供を呼び掛けています。
撃ち殺した人は、ケレルを撃ち殺してはいけないことを知らなかったのでしょうか?
ハンティングのために銃を使う知識があるなら、どの動物を狩っていいか、だめなのかそういった知識も持っておくべきだと思うんですが。
それとも飢餓にうえて、どうしても食べなければならない状況だったのでしょうか?
単にケレルを食べてみたかったのでしょうか?
なんだかやるせないですね…。
いずれにしても法で決められていることです。きちんと罪を認めて償ってほしいです。
もし、ニュージーランドでハンティングをするつもりの方は、必ずそれぞれの地でハンティングの許可を得ること、狩猟の対象になるもの、ならないものをきちんと理解し、ルールを守るようにしてくださいね。
森以外でもケレルを見つけられます。
ケレルは、森の中でなくても山の麓の住宅地や緑の多いところでは意外に発見することができます。
重そうな音を立てながら飛ぶ鳥の音を聞くと、おもわず、ケレルか?と空を見上げてケレルを探してしまいます。
余談ですが、ケレルはスーパーマーケットでも見つけることが出来ます。ケレル・ブリューイング (Kereru Brewing)ですけど。ジャケ買いしたくなるようなユニークで可愛いボトルデザインなんですよ。
ニュージーランドに来たら、森でケレルを探す以外にもたくさん種類がでている、ケレル・ブリューイング (Kereru Brewing)も試してみてください。
WEBサイトをみてみたら日本でも飲めるところがあるようですよ。探せばインターネットで購入できるケレルビールもありますので、興味のある方はご覧になってはいかがでしょうか。
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▼参照
https://www.stuff.co.nz/national/3659020/Charges-for-tourists-who-killed-kereru
https://www.newshub.co.nz/home/new-zealand/2017/08/doc-want-to-catch-campers-keen-to-cook-kereru.html